ドローンのスペックを調べていると、「GPS搭載」「GNSS対応」「GPSによるホバリング」などの言葉を見かけることがあります。
しかし、初心者の方にとっては、GPSがどのような役割を持っているのかわかりにくいかもしれません。
「ドローンのGPSは何のためにあるの?」
「GPSがないドローンでも飛ばせる?」
「飛行中にGPSが切れたら墜落する?」
このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、GPSなどの衛星測位システムは、ドローンが自分の位置を把握し、安定した飛行を行うための重要な機能の一つです。
ただし、GPSを搭載していれば必ず安全に飛行できるわけではありません。
この記事では、二等無人航空機操縦士の資格を保有し、ドローン関連業務に携わる運営者が、GPSの基本的な仕組みから、受信が不安定になる原因、飛行中の対処法まで初心者向けに解説します。
ドローンのGPSとは?
GPSとは、Global Positioning Systemの略で、人工衛星から送信される信号を利用して位置を測定するシステムです。
スマートフォンの地図アプリやカーナビなどにも利用されています。
ドローンでは、GPSなどの衛星測位システムを利用することで、機体の現在位置を把握できます。
例えば、屋外でドローンを飛ばしているときに操縦スティックを離しても、機体がその場にとどまろうとすることがあります。
これはGPSなどの位置情報と、機体に搭載された各種センサーを組み合わせて飛行制御しているためです。
ただし、位置保持にはGPSだけでなく、IMU(慣性計測装置)、気圧センサー、ビジョンセンサーなども利用されます。
GPSとGNSSの違い
ドローンの製品仕様では、「GPS」だけでなく「GNSS」という表記も見かけます。
GNSSとは、Global Navigation Satellite Systemの略で、衛星測位システムの総称です。
主な衛星測位システムには、次のようなものがあります。
| システム | 主な運用主体 |
|---|---|
| GPS | アメリカ |
| GLONASS | ロシア |
| Galileo | EU |
| BeiDou | 中国 |
| みちびき(QZSS) | 日本 |
最近のドローンでは、複数の衛星測位システムに対応しているモデルもあります。
複数のシステムを利用することで、測位に使用できる衛星の選択肢が増え、受信環境の改善につながる場合があります。
ただし、対応している衛星の種類が多ければ、どのような環境でも安定して飛行できるというわけではありません。
建物や地形、電波環境などの影響も受けます。
ドローンにGPSが搭載されているメリット
1. ホバリングを安定させやすい
GPSを利用する大きなメリットの一つが、位置保持を補助できることです。
屋外で操縦スティックを離したとき、ドローンがその場にとどまろうとするのは、GPSなどによって位置を把握しているためです。
ただし、風の影響を完全になくせるわけではありません。
また、GPSを利用できない環境でも、ビジョンセンサーなどによって位置保持できる機体があります。
2. 自動帰還(RTH)を利用できる
RTHとは、Return to Homeの略で、ドローンを設定されたホームポイントへ帰還させる機能です。
GPSなどによって機体の位置を把握することで、自動帰還を実現しています。
例えば、機体によっては次のような状況でRTHが利用されます。
- 操縦者が帰還操作を行ったとき
- 送信機との通信が途切れたとき
- バッテリー残量が少なくなったとき
ただし、RTHの作動条件は機種や設定によって異なります。
GPSの測位状態が悪い場合や、ホームポイントが正しく記録されていない場合は、期待どおりに帰還できない可能性があります。
3. 自動飛行に活用できる
GPSなどの位置情報は、あらかじめ設定したルートに沿って飛行する自動飛行にも活用されます。
例えば、次のような用途です。
- 太陽光発電所の点検
- 測量
- インフラ設備の点検
- 農業分野での利用
自動飛行では、機体の位置を継続的に把握することが重要です。
ただし、高精度な飛行が必要な場合は、GPSだけでなくRTKなどの測位技術を利用することもあります。
4. 飛行位置を記録できる
GPSなどの位置情報は、飛行ログの記録にも利用されます。
飛行経路を確認できるため、飛行後の振り返りやトラブル発生時の状況確認に役立ちます。
GPSがないドローンでも飛ばせる?
GPSを搭載していないドローンでも飛行することは可能です。
特に、小型の練習用ドローンにはGPSを搭載していないモデルもあります。
ただし、GPSによる位置保持ができないため、機体によっては操縦の難易度が高くなります。
例えば、スティックを離しても機体が風などで流される場合があります。
一方、GPS非搭載でも、ビジョンセンサーやその他の制御機能によって安定したホバリングができる機体もあります。
そのため、GPSの有無だけでなく、どのような飛行支援機能が搭載されているか確認することが重要です。
ドローンのGPSが不安定になる主な原因
GPSは便利な機能ですが、常に安定して受信できるとは限りません。
代表的な原因を紹介します。
1. 高い建物に囲まれている
高層ビルや建物に囲まれた場所では、衛星からの信号が遮られたり、建物に反射したりする場合があります。
このような環境では、位置情報の精度が低下する可能性があります。
2. 樹木や地形による影響
森林や山間部などでは、樹木や地形によって衛星信号が遮られる場合があります。
特に谷間や崖の近くなどでは、空が見える範囲が狭くなることがあります。
3. 機体周辺の電波環境
周辺の電波環境や、機体に搭載された電子機器の影響によって、測位や方位推定が不安定になる場合があります。
ただし、GPSの受信不良と、コンパス異常や送信機との通信障害は、それぞれ原因が異なる場合があります。
警告が表示されたときは、内容を正確に確認することが重要です。
4. 衛星の配置や受信状態
受信できる衛星の数だけでなく、衛星の配置も測位精度に影響します。
衛星数が多くても、配置条件が悪い場合は十分な測位精度が得られないことがあります。
飛行中にGPSが切れたらどうなる?
ここは初心者の方に特に知っておいてほしいポイントです。
GPSが切れたからといって、必ずドローンが墜落するわけではありません。
ただし、機体の位置保持機能や自動帰還機能などに影響が出る場合があります。
具体的な動作は機種や飛行モード、他のセンサーの状態によって異なります。
例えば、一部のドローンではGPSによる位置保持ができなくなると、ATTIモードに相当する飛行状態へ移行する場合があります。
ATTIモードでは、機体の姿勢や高度は一定程度制御されても、水平位置を保持できず、風などによって流されることがあります。
そのため、普段GPSによる位置保持に慣れている方は、操縦が難しく感じる可能性があります。
GPSが不安定になったときの対処法
STEP1:慌てずに機体の状態を確認する
GPSに関する警告が表示された場合は、まず機体の姿勢や移動方向を確認しましょう。
画面の警告内容を確認し、GPS受信不良なのか、コンパス異常なのか、通信障害なのかを把握することが重要です。
STEP2:無理な操作を避ける
GPSによる位置保持が失われている場合は、機体が風に流される可能性があります。
急な操作を避け、機体の動きを確認しながら慎重に操縦しましょう。
STEP3:周囲の障害物から距離を取る
建物や樹木などの近くでは、位置保持が不安定になった際に接触する危険があります。
安全に操作できる状態であれば、周囲の障害物から十分な距離を確保しましょう。
ただし、機体が不安定な状態で無理に移動させることは避けてください。
STEP4:安全に着陸できる場所を探す
GPSの受信状態が回復しない場合は、無理に飛行を続けないことが重要です。
機体を目視できる状態で、安全に着陸できる場所を確認しましょう。
状況によっては、速やかに飛行を中止する判断が必要です。
STEP5:着陸後に原因を確認する
着陸後は、飛行ログや警告履歴などを確認しましょう。
同じ場所で繰り返し問題が発生する場合は、その場所での飛行を避けることも検討してください。
また、機体の異常が疑われる場合は、メーカーの取扱説明書やサポート情報を確認しましょう。
GPSが不安定なときにやってはいけないこと
自動帰還機能を過信する
GPSが不安定な状態では、RTHが正常に機能しない場合があります。
自動帰還に頼りきらず、機体の状態とメーカーが定める操作方法を確認することが重要です。
GPSと自動帰還(RTH)の関係
GPSなどの衛星測位システムは、ドローンの自動帰還(RTH)にも重要な役割を果たします。
ただし、GPSの測位状況やホームポイントの設定によっては、正常に帰還できない場合があります。
RTHの仕組みや帰還高度の設定、注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:ドローンのRTH(自動帰還)とは?仕組み・設定方法・失敗を防ぐ注意点

無理に遠くまで飛ばす
GPSに関する警告が出ている状態で、機体をさらに遠くへ飛ばすのは避けましょう。
特に初心者は、機体の向きや位置を把握しにくくなる可能性があります。
警告を無視して飛行を続ける
GPSの受信不良やコンパス異常などの警告は、安全な飛行に影響する可能性があります。
警告が表示された場合は、原因を確認し、必要に応じて飛行を中止しましょう。
GPSとRTKの違い
業務用ドローンでは、GPSに加えて「RTK」という技術が利用される場合があります。
RTKとは、Real Time Kinematicの略で、基準局などからの補正情報を利用して測位精度を高める技術です。
| 比較項目 | 一般的なGNSS測位 | RTK測位 |
|---|---|---|
| 主な用途 | 位置保持・自動帰還など | 測量・高精度な位置管理など |
| 測位精度 | 受信環境により変動 | 良好な条件ではセンチメートル級も可能 |
| 補正情報 | 通常は不要 | 基準局などの補正情報を利用 |
| 導入の手軽さ | 比較的容易 | 対応機器や補正サービスが必要な場合がある |
RTKは高精度な測位に役立ちますが、衛星信号の受信状態などによって精度が低下する場合があります。
また、RTKに対応しているからといって、障害物を自動で回避できるわけではありません。
初心者がGPS搭載ドローンを選ぶ際のポイント
屋外でドローンを飛ばしたい初心者の方は、次のポイントを確認するとよいでしょう。
- GPS・GNSSによる位置保持機能があるか
- ホームポイントを記録できるか
- RTH機能に対応しているか
- 障害物検知機能があるか
- ビジョンセンサーなどの補助機能があるか
- GPS受信不良時の動作が説明されているか
- メーカーのサポート体制が整っているか
特に重要なのは、GPSが正常なときだけでなく、GPSが利用できないときに機体がどう動くのかを理解しておくことです。
購入前に取扱説明書を確認することもおすすめします。
ドローンのGPSに関するよくある質問
Q. GPSがないドローンは危険ですか?
GPSがないから必ず危険というわけではありません。
ただし、GPSによる位置保持ができないため、機体によっては操縦が難しくなる場合があります。
初心者は、機体の飛行支援機能を確認して選びましょう。
Q. GPSが切れるとドローンは墜落しますか?
必ず墜落するわけではありません。
ただし、位置保持機能が制限され、風などで機体が流される場合があります。
機体の動作はモデルや飛行モードによって異なります。
Q. GPSがあれば風に流されませんか?
いいえ。
GPSを搭載していても、機体の耐風性能を超える風が吹くと位置を維持できない場合があります。
Q. 室内ではGPSを使えますか?
建物の内部では衛星信号を受信しにくく、GPSを利用できない場合があります。
室内飛行に対応した機体では、ビジョンセンサーなどによって位置保持を補助することがあります。
Q. GPSがあれば自動帰還は必ず成功しますか?
いいえ。
自動帰還には、ホームポイントの記録や測位状態、障害物、バッテリー残量などが関係します。
RTHの作動条件や制限は機体によって異なります。
まとめ|GPSは便利だが過信しないことが重要
ドローンのGPSは、機体の位置を把握し、安定した飛行を補助するための重要な機能です。
特に、屋外で空撮を行う初心者にとって、位置保持や自動帰還機能は便利な存在です。
今回のポイントをまとめると、次の5つです。
- GPSは衛星を利用して位置を測定するシステム
- GNSSはGPSを含む衛星測位システムの総称
- GPSは位置保持や自動帰還、自動飛行などに活用される
- GPSが切れても必ず墜落するわけではない
- GPSが不安定な場合は無理に飛行を続けず、安全な着陸を優先する
GPSはドローンを安全に飛ばすための便利な機能ですが、すべての危険を防いでくれるわけではありません。
機体の機能を正しく理解し、周囲の安全を確認しながら飛行することが大切です。
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※本記事はドローンの一般的な測位機能と安全な飛行について解説したものです。GPS受信不良時の具体的な動作や操作方法は機体によって異なります。実際の飛行では使用機体の取扱説明書とメーカーの安全指示を優先してください。



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