ドローンを飛ばしているとき、「機体が遠くに行ってしまったらどうしよう」「電波が途切れたら戻ってくるの?」と不安に感じたことはありませんか?
そんなときに役立つ機能が、RTH(Return to Home:自動帰還)です。
RTHは、あらかじめ設定された帰還地点へドローンを戻すための機能です。
多くの空撮用ドローンに搭載されていますが、設定や使用環境によっては、正常に帰還できない場合もあります。
この記事では、二等無人航空機操縦士の資格を保有し、ドローン関連業務に携わる運営者が、RTHの仕組みや種類、設定方法、注意点を初心者向けに解説します。
この記事でわかること
- RTH(自動帰還)の仕組み
- RTHが作動する主な条件
- 帰還高度の設定方法
- 電波やGPSが途切れた場合の動作
- RTHによる事故を防ぐためのポイント
※RTHの仕様はメーカー・機種・ファームウェアによって異なります。実際の操作は必ず使用機体の取扱説明書を確認してください。
ドローンのRTH(自動帰還)とは?
RTHとは、Return to Homeの略称で、日本語では「自動帰還」と呼ばれる機能です。
飛行中のドローンを、事前に登録されたホームポイント(帰還地点)へ戻すために使用します。
例えば、ドローンが遠くまで飛行した際に、RTHを起動すると、機体がホームポイントに向かって自動的に帰還します。
ただし、RTHを起動したからといって、必ず安全に着陸できるわけではありません。
周囲の障害物、GPSなどの測位状況、バッテリー残量、風の強さなどによって、帰還が難しくなる場合があります。
そのため、RTHはあくまで操縦を補助する安全機能の一つとして考えることが重要です。
RTHの仕組み|GPSとホームポイントが重要
RTHを理解するうえで重要なのが、GNSS(衛星測位システム)とホームポイントです。
一般にGPSと呼ばれることも多いですが、実際のドローンではGPS以外の衛星測位システムを併用する機種もあります。
GNSSによって現在位置を把握する
GNSSに対応したドローンは、衛星からの信号を利用して機体の位置を把握します。
機体が自分の位置を認識できることで、ホームポイントまでの方向や距離を計算できます。
ただし、建物の近くや山間部などでは、測位精度が低下する場合があります。
ホームポイントとは?
ホームポイントとは、RTHで帰還するための基準地点です。
多くのドローンでは、離陸前後に測位条件が整うと、離陸地点などがホームポイントとして記録されます。
ただし、ホームポイントの設定方法や更新機能は機種によって異なります。
飛行前には、ホームポイントが正しく登録されているか確認しましょう。
特に、離陸地点の周辺に木や電線などの障害物がある場合は注意が必要です。
RTHには主に3つの種類がある
多くの空撮用ドローンでは、RTHが作動するきっかけとして、主に3つのパターンがあります。
| 種類 | 作動する主なきっかけ | 特徴 |
|---|---|---|
| 手動RTH | 操縦者がRTHを起動 | 任意のタイミングで帰還を指示 |
| フェイルセーフRTH | 送信機との通信が途切れる | 通信途絶時の動作設定による |
| ローバッテリーRTH | バッテリー残量が低下 | 残量や帰還距離などに応じて作動 |
なお、機種によって名称や作動条件は異なります。
① 手動RTH
手動RTHは、操縦者が送信機や操作アプリからRTHを起動する方法です。
例えば、機体が遠くにあり、帰還させたい場合などに使用します。
RTH開始後の飛行経路や高度は、機体の仕様や設定によって異なります。
また、状況によってはRTHを中断して手動操作へ戻せる機種もあります。
② フェイルセーフRTH
フェイルセーフRTHは、送信機とドローンの通信が一定時間途切れた場合などに作動する機能です。
例えば、機体が障害物の陰に入り、通信が途絶した場合などが考えられます。
ただし、通信が切れた場合の動作は、機種や設定によって異なります。
RTHではなく、その場でホバリングしたり、着陸したりする設定が可能な機種もあります。
通信が切れたら必ずRTHが作動する、というわけではありません。
飛行前に、通信途絶時の動作設定を確認しましょう。
③ ローバッテリーRTH
ローバッテリーRTHは、バッテリー残量が少なくなった際に、帰還を促したり、自動帰還を開始したりする機能です。
機種によっては、ホームポイントまでの距離や高度などを考慮して、帰還に必要なバッテリー残量を推定します。
ただし、風の影響やバッテリーの状態によって、実際の消費電力は変わります。
そのため、ローバッテリーRTHが作動するまで飛ばし続けるのではなく、余裕を持って帰還を開始することが重要です。
RTHの帰還高度とは?設定が重要な理由
RTHを安全に使用するうえで、特に重要なのが帰還高度の設定です。
帰還高度とは、RTH中にドローンが帰還する際の飛行高度に関する設定です。
例えば、周囲に高さ20mの樹木がある場合、帰還高度を低く設定していると、障害物に接触する危険があります。
一方、帰還高度を必要以上に高く設定すると、上昇に時間やバッテリーを消費する場合があります。
帰還高度はどう設定する?
帰還高度を設定する際は、次の点を確認しましょう。
- 飛行経路上の建物や樹木の高さ
- 電線や鉄塔などの障害物
- 飛行可能な高度と空域の制限
- バッテリー残量
- 風の強さや天候
特に注意したいのは、RTH高度の基準が機種によって異なることです。
一般的な空撮用ドローンでは、離陸地点やホームポイントを基準とする相対高度が使われることがあります。
例えば、ホームポイントから30mの高度に設定していても、途中にある地形や建物との距離が常に30m確保されるわけではありません。
山間部や高低差のある場所では、地形の変化を十分に考慮する必要があります。
また、RTH高度を設定しても、機体の仕様によっては、その高度まで必ず上昇するとは限りません。
現在高度や障害物検知機能などに応じて動作が変わる場合があります。
RTHの設定方法|飛行前に確認したい5つの項目
RTHの具体的な設定画面は、メーカーや機種によって異なります。
ここでは、多くのドローンに共通する確認ポイントを紹介します。
STEP1:ホームポイントを確認する
離陸前後に、ホームポイントが正しく記録されているか確認します。
操作アプリの地図画面などで確認できる機種もあります。
STEP2:GNSSの測位状況を確認する
GNSSの測位状態が十分であるか確認しましょう。
測位が不安定な状態では、RTHが正常に利用できない場合があります。
STEP3:帰還高度を設定する
飛行エリアの障害物や地形を確認し、適切な帰還高度を設定します。
ただし、航空法上の高度制限や許可条件を超えないように注意してください。
STEP4:通信途絶時の動作を確認する
送信機との通信が切れた場合に、機体がどのように動作するか確認します。
機種によっては、帰還・ホバリング・着陸などを選択できます。
STEP5:バッテリー残量と飛行環境を確認する
帰還に十分なバッテリーがあるか、風が強くないかなどを確認します。
RTHの設定だけでなく、飛行全体の安全確認が重要です。
電波が切れたらドローンは戻ってくる?
ドローン初心者が気になる疑問の一つが、「送信機との電波が切れた場合、ドローンは自動で戻ってくるのか」という点です。
結論としては、機体の仕様や設定、測位状況などによって異なります。
フェイルセーフRTHに対応していて、必要な条件が整っていれば、自動帰還が開始される場合があります。
ただし、通信が途絶した際に必ず帰還するとは限りません。
例えば、次のような場合は注意が必要です。
- ホームポイントが正しく登録されていない
- GNSSの測位状態が悪い
- 通信途絶時の動作がRTH以外に設定されている
- バッテリー残量が不足している
- 機体の安全機能に制限がある
また、通信が回復した際の操作方法も機種によって異なります。
事前に取扱説明書を確認しておきましょう。
GPSが切れたらRTHは使える?
RTHとGPSは密接に関係していますが、「通信が切れること」と「GPSなどの測位ができなくなること」は別の問題です。
送信機との通信が切れた場合
送信機との通信が途絶しても、機体側のGNSS測位が正常であれば、設定に応じてRTHが作動する場合があります。
GNSSの測位ができなくなった場合
一方、GNSSによる位置情報が利用できなくなると、機体がホームポイントへの位置関係を正確に把握できない可能性があります。
その場合、通常のRTHが使用できなくなったり、動作が制限されたりする場合があります。
また、GNSS測位が不安定な場合、機体の位置保持性能にも影響することがあります。
RTHは、GPSなどの測位が失われても必ず帰還できる機能ではありません。
詳しくは関連記事「ドローンのGPSとは?仕組み・役割とGPSが切れたときの対処法」も参考にしてください。
RTHで起こりやすい失敗と注意点
RTHは便利な機能ですが、設定や使用環境によっては事故につながる可能性があります。
① 帰還高度が低すぎる
帰還経路にある樹木や建物に接触する危険があります。
飛行前に周囲の障害物を確認し、適切な帰還高度を設定しましょう。
② ホームポイントが正しく登録されていない
ホームポイントが想定と異なる場所に設定されていると、意図しない場所へ帰還する可能性があります。
離陸前後にホームポイントを確認しましょう。
③ バッテリー残量が少ない
RTHが作動しても、帰還に必要なバッテリーが残っていなければ、途中で着陸する可能性があります。
特に向かい風の中で帰還する場合は、消費電力が増えることがあります。
④ 障害物検知機能を過信する
障害物検知機能を搭載していても、すべての障害物を検知できるわけではありません。
特に、細い電線、枝、透明な物体などは検知が難しい場合があります。
また、暗い環境やセンサーの条件によって、検知性能が低下することもあります。
⑤ 強風の影響を受ける
帰還時に強い向かい風が吹いていると、通常よりも帰還に時間がかかる場合があります。
風が強い日は無理に飛行せず、早めに帰還する判断が重要です。
⑥ RTHの動作を理解していない
RTH中の上昇・水平移動・着陸の流れは、機種や設定によって異なります。
飛行前に、取扱説明書でRTHの動作を確認しましょう。
RTHを安全に使うための飛行前チェックリスト
RTHを使用する前に、次の項目を確認しましょう。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| ホームポイント | 正しい位置に登録されているか |
| GNSS | 測位状態は良好か |
| 帰還高度 | 障害物や地形を考慮しているか |
| 通信途絶時の動作 | RTHなど適切な設定になっているか |
| バッテリー | 帰還に十分な残量があるか |
| 天候 | 強風などのリスクはないか |
| 着陸地点 | 人や障害物がないか |
| 飛行ルール | 空域や高度などの条件を守れるか |
特に初心者は、RTHに頼りきりにならず、機体の位置やバッテリー残量を常に確認することが大切です。
RTHに関するよくある質問
Q. RTHを使えば必ず離陸地点に戻ってきますか?
必ず戻るとは限りません。
ホームポイントの登録状況やGNSSの測位状態、バッテリー残量、障害物などによって帰還できない場合があります。
また、ホームポイントが離陸地点以外に設定されている機種もあります。
Q. RTH中に操縦できますか?
機種によって異なります。
RTH中に一部の操作が可能な機種や、RTHを中断して手動操作に切り替えられる機種があります。
具体的な操作方法は取扱説明書を確認してください。
Q. RTHの帰還高度は何mに設定すればいいですか?
すべての場所に共通する正解はありません。
周囲の障害物、地形、飛行可能な高度、機体の仕様などを考慮して設定する必要があります。
Q. 100g未満のドローンにもRTHはありますか?
機種によって異なります。
100g未満のドローンでも自動帰還機能を搭載した製品はありますが、すべての機体に搭載されているわけではありません。
また、GNSSを利用するRTHと、簡易的な帰還操作を区別して確認することが重要です。
Q. RTHのテストはした方がいいですか?
機能の動作を理解しておくことは重要です。
ただし、通信を意図的に切断するなどの危険な方法で試すことはおすすめしません。
メーカーの説明書に従い、安全が確保された環境で機能を確認しましょう。
まとめ|RTHは便利だが過信しないことが重要
RTH(自動帰還)は、ドローンをホームポイントへ戻すための便利な機能です。
手動操作で起動するほか、通信途絶やバッテリー残量の低下などをきっかけに作動する機種もあります。
ただし、RTHが搭載されているからといって、必ず安全に帰還できるわけではありません。
今回のポイントをまとめると、次の5つです。
- RTHはドローンをホームポイントへ戻すための機能
- 手動・通信途絶・低バッテリーなどで作動する場合がある
- 帰還高度とホームポイントの設定が重要
- GNSSの測位不良や強風などで帰還できない場合がある
- RTHを過信せず、飛行中も安全確認を続ける
初心者の方は、RTHの仕組みを理解し、飛行前に必要な設定を確認する習慣を身につけましょう。
関連記事
※本記事は一般的なRTHの仕組みを解説したものです。実際の作動条件や設定方法は機種によって異なります。必ず使用するドローンの取扱説明書と最新の飛行ルールを確認してください。



コメント