工場やプラントでは、煙突、鉄塔、高所配管、タンク、屋根など、さまざまな設備の定期点検が必要です。
しかし、高所や人が立ち入りにくい場所では、足場や高所作業車を使用することも多く、点検にかかる費用や作業員の安全確保が課題となります。
こうした課題への対応策の一つとして注目されているのが、ドローンを活用した設備点検です。
ドローンを使用することで、従来は接近が難しかった設備の外観を撮影し、劣化や損傷が疑われる箇所を確認できる場合があります。
一方、工場やプラントには、配管、鉄骨、電線、稼働設備などが密集しており、一般的な空撮とは異なる安全対策が必要です。
この記事では、ドローン関連業務に携わる運営者が、工場・プラントにおけるドローン点検の活用事例、メリット・課題、導入方法、費用の考え方を解説します。
工場・プラントのドローン点検とは?
工場・プラントのドローン点検とは、ドローンに搭載したカメラやセンサーを使用し、設備や構造物の状態を確認する方法です。
主に、地上から確認しにくい高所設備や、広範囲に設置された設備の外観調査などに活用されます。
代表的な点検対象は次のとおりです。
| 点検対象 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 煙突 | 外壁のひび割れ、剥離、腐食など |
| 鉄塔・鉄骨構造物 | 部材の変形、腐食、接合部の外観 |
| 高所配管 | 腐食、保温材の損傷、支持部の状態 |
| タンク・サイロ | 外壁、屋根、付帯設備の状態 |
| 工場屋根 | 屋根材の損傷、劣化、雨樋の状態 |
| 太陽光パネル | 外観の異常、赤外線による温度分布 |
ただし、ドローンによる撮影で確認できるのは、基本的にカメラやセンサーで取得可能な情報です。
内部の腐食や肉厚、接合部の強度などを確認するには、別の検査方法が必要になる場合があります。
工場・プラントでドローン点検が注目される理由
高所作業の負担を減らせる
工場やプラントには、地上から数十メートル以上の高さに設置された設備もあります。
従来の点検では、足場や高所作業車を使用して作業員が接近する必要がある場合があります。
ドローンで必要な画像を取得できれば、作業員が直接高所へ接近する回数を減らせる可能性があります。
ただし、ドローンの墜落や設備への衝突といったリスクがなくなるわけではありません。
点検準備を効率化できる場合がある
足場の設置や撤去が必要な点検では、準備作業に時間がかかる場合があります。
ドローンによる外観撮影で目的を達成できる場合は、こうした準備作業を減らせる可能性があります。
一方、詳細検査や補修が必要な場合には、従来の点検方法を併用することもあります。
設備の状態を画像として記録できる
ドローンで撮影した写真や動画は、デジタルデータとして保存できます。
撮影位置や対象設備を整理しておけば、過去の点検結果との比較にも役立ちます。
定期点検では、同じ箇所を継続して確認できるよう、撮影方法を統一することが重要です。
活用事例① 煙突のドローン点検
工場やプラントの煙突は、高所に設置されていることが多く、外観を詳細に確認するには専用の設備が必要になる場合があります。
ドローンを使用すれば、煙突の周囲から外壁などを撮影できる場合があります。
確認できる主な項目
- 外壁のひび割れ
- 表面の剥離や欠損
- 鋼製部分の腐食
- 塗装の劣化
- 付帯設備の外観異常
ただし、撮影画像だけで構造上の健全性を確定できるわけではありません。
また、稼働中の煙突では、排気による気流や熱の影響などに注意する必要があります。
煙突点検で注意したいこと
煙突の周辺では、上昇気流や乱流が発生する場合があります。
機体の耐風性能だけでなく、排気の影響や設備との離隔距離を考慮した飛行計画が重要です。
必要に応じて、設備管理者と運転状況を確認し、点検に適した条件を調整します。
活用事例② 鉄塔・鉄骨構造物の点検
工場内の鉄塔や鉄骨構造物も、ドローン点検の対象となります。
高所の部材や接合部を撮影することで、外観上の異常が疑われる箇所を確認できます。
確認できる主な項目
- 鉄骨部材の腐食
- 塗装の劣化
- 部材の変形
- 接合部周辺の外観
- 付帯設備の損傷
ただし、ボルトの締結状態や内部の損傷など、画像だけでは判断できない項目もあります。
鉄骨構造物で注意したいこと
鉄骨が密集する環境では、障害物との距離が近くなりやすく、GNSSの受信環境が悪化する場合があります。
また、電波の反射などによって通信や位置保持に影響が出る可能性もあります。
飛行環境に適した機体と操縦方法を選ぶことが重要です。
活用事例③ 高所配管の点検
工場やプラントでは、配管が高所や設備の間に設置されていることがあります。
ドローンを使用することで、地上から確認しにくい配管の外観を撮影できる場合があります。
確認できる主な項目
- 配管外面の腐食
- 保温材や外装材の損傷
- 配管支持部の外観
- 漏れが疑われる外観上の変化
- 周辺設備との干渉や異常
ただし、ドローンによる画像確認だけで配管内部の腐食や肉厚を測定できるわけではありません。
必要に応じて、超音波厚さ測定などの検査方法と組み合わせます。
配管点検で注意したいこと
配管が密集している場所では、ドローンの飛行スペースが限られる場合があります。
また、高温配管や可燃性物質を取り扱う設備の周辺では、通常の空撮以上に慎重な安全評価が必要です。
特に防爆管理区域では、一般的なドローンをそのまま使用できるとは限りません。
活用事例④ タンク・サイロの点検
大型タンクやサイロも、ドローン点検が検討される設備の一つです。
外壁や屋根など、地上から確認しにくい部分の撮影に活用できる場合があります。
確認できる主な項目
- 外壁の腐食や塗装劣化
- 屋根の損傷
- 付帯設備の外観
- 溶接部周辺の外観上の異常
- 雨水の滞留が疑われる箇所
ただし、タンク内部の点検には、内部環境に対応した専用機材や安全対策が必要になる場合があります。
酸欠、可燃性ガス、粉じんなどの危険性がある場所では、飛行可否を含めて慎重に検討する必要があります。
工場・プラント点検に使用するドローンの種類
点検目的によって、適したドローンは異なります。
可視光カメラ搭載ドローン
写真や動画を撮影し、設備の外観を確認する用途に使用します。
腐食や損傷が疑われる箇所を記録する場合などに活用できます。
赤外線カメラ搭載ドローン
赤外線カメラを使用すると、対象物の表面温度分布を可視化できます。
例えば、設備の温度異常が疑われる箇所の確認などに活用される場合があります。
ただし、赤外線画像から確認できるのは測定条件に依存した温度情報であり、内部異常や故障を必ず特定できるわけではありません。
狭所・屋内向けドローン
屋内や狭い設備内では、一般的な屋外用ドローンでは飛行が難しい場合があります。
こうした環境では、障害物への接触を考慮した構造や、GNSSを使用しない位置推定機能などを備えた専用機体が検討されます。
ただし、専用機体であっても、設備内のすべての場所で安全に飛行できるわけではありません。
ドローン点検のメリットと課題
| 項目 | メリット | 注意点・課題 |
|---|---|---|
| 安全性 | 高所への直接接近を減らせる場合がある | 墜落・衝突への対策が必要 |
| 作業効率 | 足場などの準備を減らせる場合がある | 飛行準備や安全管理が必要 |
| 撮影範囲 | 広範囲の外観を撮影できる | 障害物の裏側などは確認が難しい |
| データ管理 | 写真・動画を記録できる | 撮影位置と設備の対応付けが必要 |
| 点検品質 | 外観の状態を確認できる | 接触検査などを代替できない場合がある |
| 費用 | 条件によっては総費用を削減できる | 機材・操縦・解析費用が発生する |
ドローン点検を導入する際は、単に撮影できるかどうかだけでなく、必要な点検品質を確保できるかを確認することが重要です。
工場・プラントでのドローン点検に必要な安全対策
工場やプラントでは、一般的な屋外空撮とは異なる危険要因があります。
① 設備との離隔距離を確保する
配管、鉄骨、電線などの障害物との距離を確認し、安全な飛行ルートを設定します。
設備との距離が近い場合は、機体の位置保持性能や操縦方法も考慮する必要があります。
② 周辺作業員への安全対策を行う
飛行エリアの周辺で作業する人がいる場合は、立入管理や関係者への周知などが必要です。
施設管理者と事前に調整し、飛行中の安全を確保しましょう。
③ 電波・GNSS環境を確認する
工場やプラントには金属構造物が多く、GNSSの受信や無線通信に影響する場合があります。
機体の機能を過信せず、飛行場所の環境に応じた対策を検討します。
④ 危険物や高温設備への接近を避ける
可燃性ガス、粉じん、高温設備などがある場所では、飛行そのものが危険となる場合があります。
防爆要件や施設独自の安全規則を確認し、必要に応じて飛行を見送る判断が重要です。
⑤ 必要な飛行手続きを確認する
屋外でドローンを飛行させる場合は、航空法などの適用関係を確認する必要があります。
飛行場所や飛行方法によっては、国土交通省への許可・承認申請が必要になる場合があります。
また、航空法上の手続きとは別に、施設管理者の許可や現場の安全手続きが必要になることがあります。
工場・プラントのドローン点検にかかる費用
ドローン点検の費用は、点検対象や撮影条件、必要な成果物によって異なります。
主な費用要因は次のとおりです。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 現地調査・計画 | 点検対象、飛行環境、安全対策の確認 |
| 機材 | ドローン、カメラ、センサーなど |
| 操縦・安全管理 | 操縦者、補助者、安全管理体制 |
| 撮影作業 | 対象設備の撮影 |
| データ整理 | 画像の分類、設備との対応付け |
| 解析・報告書 | 異常候補の整理、報告書作成 |
| 追加検査 | 必要に応じた近接点検や接触検査 |
例えば、外観写真の撮影のみを依頼する場合と、異常箇所の抽出や詳細な報告書作成まで依頼する場合では、費用が異なります。
また、工場の稼働状況や安全管理上の制約によって、作業時間や必要な人員が増える場合があります。
費用を比較する際は、撮影費用だけでなく、点検全体に必要な作業を含めて検討することが重要です。
ドローン点検を導入するまでの流れ
工場・プラントでドローン点検を導入する場合、一般的には次のような流れで検討します。
STEP1:点検目的を明確にする
まず、何を確認したいのかを整理します。
例えば、腐食の有無を確認したいのか、設備全体の外観を記録したいのかによって、必要な撮影方法が異なります。
STEP2:点検対象と飛行環境を確認する
設備の高さ、形状、周辺障害物、稼働状況などを確認します。
飛行可能な場所や安全管理上の制約を把握することが重要です。
STEP3:必要な撮影データを決める
写真、動画、赤外線画像など、点検目的に必要なデータを決定します。
また、どの程度の解像度や撮影範囲が必要かも確認します。
STEP4:飛行計画と安全対策を策定する
飛行ルート、立入管理、緊急時の対応などを検討します。
施設管理者との調整や、必要な手続きも行います。
STEP5:撮影・データ取得を行う
計画に従って撮影を実施します。
撮影中は、設備や周辺作業員との距離などに注意します。
STEP6:データを整理・評価する
取得した画像や動画を整理し、異常が疑われる箇所を確認します。
必要に応じて、従来の検査方法による追加確認を実施します。
STEP7:報告書を作成する
点検対象、撮影結果、異常候補などをまとめます。
定期点検で活用する場合は、次回以降の比較ができるよう、撮影位置や記録方法を整理しておくことが重要です。
ドローン点検を外注する際のチェックポイント
ドローン点検を外部業者へ依頼する場合は、次の点を確認しましょう。
- 工場・プラントでの点検業務に対応できるか
- 対象設備に適した機材を使用できるか
- 必要な撮影解像度を確保できるか
- 安全管理体制が整っているか
- 取得データと設備の位置を対応付けられるか
- 報告書にどこまで含まれるか
- 追加検査が必要な場合の対応範囲はどこまでか
特に重要なのは、ドローンを飛ばせることと、設備点検として必要な情報を取得できることは別という点です。
点検目的に応じた撮影計画と成果物の内容を事前に確認しましょう。
工場・プラントのドローン点検に関するよくある質問
Q. 工場の煙突はドローンで点検できますか?
煙突の外壁や付帯設備など、外観を撮影できる場合があります。
ただし、排気による気流や熱の影響などを考慮する必要があります。
また、内部の状態や構造上の健全性を確認するには、別の検査方法が必要になる場合があります。
Q. 工場を稼働したままドローン点検できますか?
設備や飛行場所の条件によって異なります。
稼働中でも撮影可能な場合がありますが、高温設備、危険物、周辺作業員などの状況によっては、設備停止や作業エリアの制限が必要になることがあります。
Q. ドローン点検だけで法定点検を完了できますか?
必ずしも完了できるわけではありません。
点検対象に適用される法令や技術基準によって、必要な検査方法が異なります。
ドローンによる撮影結果が、必要な要件を満たすか確認する必要があります。
Q. ドローン点検には国家資格が必要ですか?
すべてのドローン点検で国家資格が必須というわけではありません。
飛行場所や飛行方法などによって、必要な許可・承認や資格の条件が異なります。
また、設備点検そのものに専門的な技術や資格が必要になる場合があります。
Q. ドローン点検は従来の点検より安くなりますか?
点検対象や作業条件によって異なります。
足場や高所作業車の使用を減らせる場合は費用削減につながる可能性がありますが、ドローンの撮影・解析・安全管理などの費用も発生します。
まとめ|工場・プラントのドローン点検は目的に応じた使い分けが重要
工場・プラントのドローン点検は、煙突、鉄塔、高所配管、タンク、屋根など、さまざまな設備の外観確認に活用できる可能性があります。
特に、高所作業の負担軽減や撮影データの記録などが期待できます。
一方、工場やプラントには障害物や危険設備が多く、安全管理が重要です。
また、ドローンによる撮影だけでは確認できない項目もあるため、必要に応じて従来の点検方法と組み合わせる必要があります。
今回のポイントは次の5つです。
- 工場・プラントでは煙突、鉄塔、配管、タンクなどがドローン点検の対象になる
- 高所作業や足場設置の負担を減らせる可能性がある
- GNSS環境や障害物、危険設備への対策が重要
- ドローンによる撮影だけですべての検査を代替できるわけではない
- 導入時は点検目的・撮影データ・安全管理・成果物を明確にする
ドローン点検の導入を検討する際は、まず対象設備と点検目的を整理し、従来の方法と比較してどのような効果が期待できるか確認しましょう。
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※本記事は工場・プラントにおけるドローン点検の一般的な活用方法を紹介するものです。実際の点検では、対象設備に適用される法令、点検基準、施設管理者の安全規則などを確認してください。



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